研究概要 |
1.くも膜下出血モデル(ラット自家血大槽内注入モデル)の作成 ヒトくも膜下出血に近似した動物モデルを作成するために、ラットの自家血0.5mlを大槽内へ注入する方法によるくも膜下出血モデルを作成した。このモデルの血管攣縮の程度を組織学的に評価した。その結果、48時間の間隔をあけて2回注入する2回出血モデルでは5日目に中等度の攣縮を認め、7日目にも狭小化が持続していた。また、このモデルでは,PARP(Poly-ADP-ribose Polymerase)のWestern blottingとTunnel染色により、血管平滑筋細胞にも壊死が生じていることを証明した。 2.攣縮血管壁のBcl familyの変化 攣縮血管壁のBcl family(BC1-xL/S, Bax)をWestern blotにて検討した。その結果、2回出血モデルではミトコンドリア膜の透過性を抑制するBc1-xL, xSが出血後3日より減少し、透過性を亢進するBaxが出血後5日より増加していた。 3.ミトコンドリアよりのcytochrome cの漏出の評価 Cytochrome cのミトコンドリア分画から細胞質分画への漏出について、Western blotにて検討した。2回出血モデルにおいては、出血後5日より細胞質分画へcytochrome cが漏出していた。 以上の結果より、ヒトにより近いくも膜下出血モデルであるラット2回出血モデルにおこる脳血管攣縮においては、出血に伴い、Bcl\xLの減少、Baxの増加が生じ、ミトコンドリア膜の透過性亢進が起こり、それに伴ってcytochorome cの細胞質への漏出が起こっていた。その後、cytochorome cの漏出に伴い、さまざまなcaspase系の活性化が惹起され、appototicな変化を起こすことが、攣縮血管の変性・壊死に関与しているものと考えられた。
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