研究課題
基盤研究(C)
脳腫瘍の中でも神経膠腫や脈絡叢乳頭腫、髄芽腫などの発生にはウイルスが関与する可能性が考えられているが、未だ定説がないのが現状である。これらの腫瘍の発生にウイルスが関与するという考えは、実験的脳腫瘍の見地より、新生児ハムスターにSV40ウイルスを接種することにより上衣腫や脈絡叢乳頭腫が発生したり、JC virusを接種することにより髄芽腫が発生することに由来している。また実際の脳腫瘍組織におけるウイルスDNAの存在を検出することは、その脳腫瘍の発生にウイルスが関与しいている可能性を示しており、脳腫瘍発生機序を解明する意味で重要である。本研究においては、膠芽腫、髄芽腫、上衣腫、脈絡叢乳頭腫において腫瘍組織内のウイルスDNAや蛋白の存在を確認することで、これらの腫瘍発生におけるウイルスの関与の有無を明らかにするとともに、腫瘍が発生する機序を明らかにすることを目的とし、各種脳腫瘍(髄芽腫、上衣腫,脈絡叢乳頭腫)における、JCウイルス由来の遺伝子産物の発現解析を行った。これらの脳腫瘍組織におけるウイルスDNAの存在を確認するために、脳腫瘍組織切片よりDNAを抽出し、JCウイルスに特異的なDNA配列をプライマーとしてPCRを行いウイルス遺伝子の存在の有無を解析した。また、その塩基配列を解析することによりウイルス由来のDNAであることを確認した。その結果、32例の髄芽腫では、JC virus DNAは全く検出されなかったが、上衣腫18例中5例、脈絡叢乳頭腫5例中1例でJC virus DNAが検出された。次にJCウイルスのLargeT抗原やその他のウイルス関連蛋白に対するモノクローナル抗体を用いて免疫組織化学染色法により同定した。その結果脈絡叢乳頭腫1例で腫瘍細胞の核内にJCウイルスのLargeT抗原が確認できた。以上の結果より、上衣腫や脈絡叢乳頭腫などの脳室周囲に発生する腫瘍でJC virus DNAが検出されたことは、このウイルスによる神経幹細胞または前駆細胞の腫瘍化の可能性が示唆され、大変興味深く、今後、これらの腫瘍発生機序の解明には、より詳細な解析が必要と考えている。
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