内頸動脈の閉塞症や70%以上の狭窄症で虚血性網膜症をきたす可能性があることを前年度までに明らかとしてきた。内頸動脈閉塞性病変による虚血性網膜症の病態解析では、眼動脈血流や、眼底所見、眼循環動態の観察が重要であることを指摘してきた。今年度は、この様な症例の自然経過と、外科的治療の効果について眼循環と眼症状について評価した。 自然経過例では、眼症状は徐々に進行し、失明に至った症例も存在した。眼循環では、眼動脈血流が改善した症例はなく、逆流が進行した症例もあり、眼症状と眼循環障害の進行に相関があった。 外科的治療は、浅側頭動脈-中大脳動脈(STA-MCA)吻合術、頸部頸動脈血栓内膜剥離術(CEA)、頸部頸動脈STENT留置術が挙げられる。STA-MCA術施行例では、術1ヵ月後、3ヵ月後と徐々に眼動脈血流が改善した。視力障害は、経過観察中約48%の症例で経過中改善し、他の症例では眼症状の進行が予防された。CEA、STENT留置術施行例では、術1週間後の眼循環動態の観察で、既に眼循環動態は改善し、視力障害も術直後から改善した症例が多かった。 内頸動脈閉塞性病変に起因する虚血性網膜症の予後は不良であった。STA-MCA吻合術や、CEA、STENT留置術などの外科的な脳血行再建術で眼循環が改善し、眼症状が改善する症例が存在した。本研究では脳血行再建術の手術適応は、内頸動脈閉塞性病変に対する手術適応を基準として行なってきた。今後、眼循環の面からの脳血行再建術の適応を明らかとする必要がある。
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