研究概要 |
1)IP_3 3キナーゼノックアウトマウスにおける機能的変化 IP_33kinaseノックアウトマウスすなわちIP_4欠損マウスを使用し、同マウスの虚血脆弱性、野生種マウスと比べた記憶能力に関して実験を行なった。ノックアウトマウスのbackground strainはマウスの中では最も虚血感受性の強いC56BL/6であり、本strainで通常、細胞死が得られる20分間の両側総頚動脈閉塞法にて前脳虚血を作成、虚血7日後に経心的潅流固定を行い、海馬における細胞死の程度をノックアウトマウスと野生種で組織学的に比較検討したところ、虚血脆弱性に有意な差は得られなかった。 2)幼若砂ネズミの虚血抵抗性 一般的に言われるように幼若動物が本当に虚血抵抗性があるならば、そのメカニズム解明は脳虚血治療に結びつく可能性がある。生後2週間以内の砂ネズミを使い、1)実際に前脳虚血に対し抵抗性があるか、2)抵抗性があるとすれば、そのメカニズムは何かにつき、主としてCa^<2+>代謝の面から検討した。 1)5分間の両側総頚動脈遮断による前脳虚血に対し、成砂ねずみが全例(10例)海馬CA1領域に遅発性神経細胞死を来たしたのに対し、幼弱砂ねずみでは同数中、遅発性神経細胞死を来たした例はなかった。 2)海馬スライスを用いたRhod2-AM負荷による[Ca^<2+>]_iイメージング実験において、成砂ネズミでは酸素グルコース除去後にCA1領域において約2.5倍の[Ca^<2+>]_i上昇を認めたが、幼弱動物では[Ca^<2+>]_i上昇をほとんど認めなかった。 3)生直後からの海馬のAMPA型グルタミン受容体のGluR1-4の蛋白発現を経時的に調べると、GluR2のみ成個体に比し生後13,20,27日において有意に発現が増加していた。 以上3つの結果より、AMPA型グルタミン酸受容体のGluR2が幼弱期における神経細胞死の制御を、細胞内Ca^<2+>の調節を介して行なっている可能性が示唆された。
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