研究概要 |
ラットを用いた局所脳虚血後のリハビリテーションによる脳機能再生に関する研究 【背景】局所脳虚血ラットを用いて、環境の充実(リハビリテーション)が機能予後の改善をもたらすことが報告されている。脳における、虚血後の環境因子の違いによる遺伝子発現に関しては不明な点が多い。我々は、すでに脳虚血病態モデルであるspreading depression(SD)モデルを用いて、SD誘発側のみならず、対側にもプロスタグランジン生成が増加していることを明らかにした。プロスタグランジンは、虚血後の神経再生に関連している可能性がある。 【目的】脳虚血後、異なる環境下で飼育したラット脳組織を用いて、プロスタグランジン及び神経再生に関連する遺伝子および蛋白質の発現を調べる。 【方法】雄性SDラットを用いて、中大脳動脈1時間閉塞再灌流ラットモデルを作成した。対照群(非虚血ラットを運動器具のないケージで飼育,n=4)、標準環境群(虚血ラットを運動器具のないケージで飼育,n=8)、充実環境群(虚血ラットを運動器具が備えられたケージで飼育,n=6)の3群に分けた。虚血後、2,4週後に運動機能の評価を行い、4週の運動機能評価後に断頭し、脳組織を採取した。 【結果】運動機能は、3群間で有意差は見られなかった。脳組織におけるCOX-2(cyclooxygenase-2),synaptophysin, GFAP(glial fibrillary acidic protein),MAP2(microtubule associated protein 2),VEGF(vascular endothelial growth factor)を染色した。COX-2は虚血周辺部の神経に散在性に染色された。synaptophysinは、虚血病巣内での虚血と非虚血の境界域を中心に染色されていた。GFAPは、虚血周囲の虚血と非虚血の境界域を中心としてグリアに染まっていた。これらの染まり方に3群間で違いは見られなかった。VEGFは、今回の条件では染色されなかった。Synaptophysinにつき、real time PCRとRT-PCRを用いて遺伝子発現を比較したが、3群間に有意差は見られなかった。 【結論】現時点の例数では、運動機能、測定した遺伝子、蛋白質発現には3群間に有意差はみられなかった。現在、例数追加の実験を行い、プロスタグランジンの生成及びその他の神経再生関連遺伝子をmicroarray解析にて検索する予定である。
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