研究概要 |
我々は、脳血病態下に芦けるプロスタグランジン作用を明らかにするため、脳虚血病態モデルを用いて、cyclooxygenase-2(COX-2)発現と脳循環代謝・神経受容体機能との関連を検討した。ラット局所脳虚血モデルを用いた研究では,虚血24時間以内の経時的な脳血流変化、ベンゾジアゼピン受容体(BZR)機能の変化とCOX-2発現とを対比させ、COX-2誘導とプロスタグランジン産生は虚血の程度に依存し(Yokota C, et al.,2004)、BZR機能測定は、neuronal viabilityのマーカーとなりうることを明らかにした(Kaji T, et al.2004)。次に、小動物を中心とした局所脳虚血モデルの脳梗塞周囲で自発的に発生するとされている、脱分極波の伝搬現象である拡延性抑制(Spreading depresgion, SD)に着目した。我々は、虚血によって誘発されるSDは、虚血側では、従来の報告通り組織障害性に、反対側では、剖検報告からの推察にとどまるが、庫血後の神経ネットワークの再構築に作用し、更に、これらの作用にはCOX-2が関連するのではないかと考えた。そこで、ラットSDモデルを用いて、両側大脳半球に誘導される遺伝子解析をmicroarray analysisを用いて行った。その結果、SD誘発2時間後よりSD誘発側、対側大脳皮質にS100A9遺伝子がupregulateされ、選択的COX-2阻害薬投与によりS100A9遺伝子が両側性にdownregulateされた。以上より、SD関連遺伝子であるS100A9遺伝子発現には、COX-2活性が関連することが示された(Yokota C, et al.2005)。脳虚血病態時の神経ネットワークの再構築には、SD関連選伝子であるCOX-2、S100A9遺伝子が関っている可能性があると考え5れた。
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