本研究の目的は、軟骨細胞と骨髄由来間葉系細胞を層状に共培養することにより、移植用の骨軟骨複合体を形成することである。In vitroでの軟骨組織の形成には、従来コラーゲンゲルや3次元構造ポリマーなどの足場材料(scaffold)が利用されているが、本研究ではこうした足場材料を用いない方法であるAlginate-recovered-chondrocyte法(ARC法)を用いた。ウサギ骨髄由来間葉系細胞を培養インサート上に種々の濃度で高密度培養し、その上にARC法により軟骨組織を作製した。播種する骨髄由来間葉系細胞の数を増やすことにより、軟骨組織中のコラーゲン含有量は変化しなかったが、プロテオグリカン含有量は有意に低下した。作成された組織は、4週間以降ピンセットで保持するのに十分な強度を有し、軟骨層はII型コラーゲンに対する免疫染色にて染色された。軟骨細胞と骨髄由来間葉系細胞で層状に作製した組織は、軟骨細胞のみで作製した組織よりも高い力学的強度を有していた。これらの組織をヌードマウスの皮下に移植したところ、4週の時点で明らかな2層構造が保たれていたが、骨髄細胞層の骨化は確認されなかった。本研究により、足場材料を使用せずに、軟骨細胞および骨髄由来間葉系細胞からなる2層性組織を作成できることが明らかとなった。この組織は骨軟骨欠損へ移植するのに十分な強度を有し、自家組織移植術への応用が可能と思われた。今後は骨髄細胞層を骨化させるためのさらなる条件検討が必要と考えられた。
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