研究概要 |
(目的)関節リウマチ(リウマチ)は関節破壊を伴う慢性炎症性疾患である。リウマチ増殖滑膜から産生される炎症性サイトカイン(IL-1,TNF,IL-6)がその発症進展に重要な役割を果たしており,抗サイトカイン療法が欧米を中心に広く普及している。しかし、生物製剤は高価であり、治療を中止すると再燃するなど問題も多い。そこで、関節リウマチの遺伝子療法の可能性について検討するため、抗炎症性サイトカインであるIL-4,IL-10をアデノ随伴ウイルス(Adeno-associated virus : AAV)の発現ベクターに組み込み、リウマチ滑膜細胞に感染させ、抗炎症作用について検討した。 (方法)AAVベクターにIL-10とIL-4のcDNAを同時に挿入した発現ベクターを作成し、ヒト胎児腎由来293細胞(パッケージング細胞)にトランスフェクションしてrAAVベクター(AAv-IL-10/IL-4発現ベクター)を精製した。NIH3T3細胞及びリウマチ滑膜細胞にAAV-IL-10/IL-4発現ベクターを感染させ、感染効率をウエスタンブロットおよびELISA法により確認した。 (結果)感染滑膜細胞からIL-4,IL-10タンパク質が培養上清中に9-50ng/mlのレベルで分泌された。リウマチ滑膜細胞はlipopolysaccharide(LPS)の刺激によりIL-6およびprostaglandinE2(PGE2)の産生が著しく増強したが、AAV-IL-10/IL-4発現ベクターを感染させると、その増強作用は完全に抑制された。 (結語)我々の作成したAAV-IL-10/IL-4発現ベクターは効率よくリウマチ滑膜細胞に感染し、PGE2,IL-6の産生を抑制した。この結果はIL-4,IL-10による遺伝子療法がリウマチ関節局所の炎症の機転を抑制しうることを示唆している。
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