骨髄細胞をドナーとした骨再生治療法の臨床応用のため、まず骨髄細胞の継代による骨芽細胞への分化能とin vivoでの骨形成能を検討した。ラットの骨髄細胞を採取し、デキサメサゾンを含む培養液(osteo-medium:OS)と含まない培養液(control medium:CM)で培養したところ、アルカリフォスファターゼ(ALP)、オステオカルシン(OC)の活性およびmRNA発現は、OSで培養された細胞の方が有意に上昇していた。次に、OSでの継代別の骨芽細胞分化能および骨形成能を検討した。In vitroでは、培養液中のALP、OC活性およびmRNAの発現は継代が進むにつれ低下した。継代別に培養細胞をdiffusion chamberに封入し、ヌードマウスの背部皮下に移植後4週にて、形成された組織をX線および組織学的に検討した。P0〜P2までは良好な骨軟骨形成が認められたが、P3では明らかな骨軟骨形成は認められなかった。継代して細胞数を増加させることにより骨形成能が低下してしまうという結果は、臨床応用を考えると克服すべきものである。現在、ヒトの細胞での結果を検討するとともに、骨形成能を維持したまま増殖させる方法を検討中である。さらに偽関節の臨床応用を目的として、血管新生能を有するvascular endothelial growth factor(VEGF)を骨髄細胞に遺伝子導入後、ラット脚延長モデルおよび骨欠損モデルに注入して骨形成能を検討している。完全長ヒトVEGF cDNAを含む発現vectorをcompetent cellにtransformationののち大量培養し、精製してラット骨髄細胞にリポフェクション法により遺伝子導入した。導入効率は培養液中のVEGF活性を指標にしているが、今のところ導入効率が一定しておらず、導入方法の変更などを考慮している。
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