酸化チタンの中でもアナタース型あるいはルチル型の結晶構造をもつものは、高い生体活性を持ち、生体親和性に優れ、溶解性が無く、これをポリメチルメタクリレート(PMMA)に分散させて作製した生体活性骨セメントは、インプラント固定のみならず、椎体などへの骨補填材料としての応用も期待されている。当初、アナタース型の結晶構造を持つ¢200nmの酸化チタン微粒子をPMMAに分散させたセメントを作製し、骨伝導能の評価をラットの脛骨骨髄内に埋め込んで周囲の骨との反応をみることにより行ったが、優れた骨伝導能を示すものの、強度的に市販のPMMA骨セメントに劣り、椎体などへの骨補填材料としては応用可能であるが、インプラント固定には応用困難と考えられた。新たに、¢2μmのアナタース型とルチル型の結晶構造をほぼ等量含む酸化チタン微粒子をPMMAに分散させたセメントを作製したところ、酸化チタンをPMMAに重量比で56%加えたセメント(ST2-56c)は、圧縮強度でPMMAより優れ、曲げ強度はPMMAと同等であった。さらにST2-56cの骨伝導能は、他の酸化チタンを分散させたセメントや、優れた生体活性を持つAWガラスセラミックスをPMMAに分散させたセメントよりも、有意に高かった。ST2-56cは改良することにより、骨補填材料としてだけでなく、インプラント固定への応用も可能と考えられた。今後さらに異なる酸化チタン微粒子をPMMAに分散させたセメントも作成して骨伝導能等の評価を行い、臨床応用可能な生体活性骨セメントの開発と実験を進めていく予定である。
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