研究課題
Ewing肉腫(ES)は、骨軟部悪性腫瘍の中で最も生命予後不良な腫瘍である。ESの90%以上の症例で染色体転座t(11:22)(q24:q12)がみられ、その結果、異常な融合遺伝子EWS-Fli1が生じる。この融合遺伝子産物は強力な転写因子として働き、正常線維芽細胞をtransformする活性を有することが知られており、異常な転写因子EWS-Fli1はESの発がん原因そのものと考えられている。我々は、ES細胞株を用いEWS-Fli1融合遺伝子発現と増殖能との間に正の相関があり、EWS-Fli1融合遺伝子はESの癌化のみならず、その生物学的性質をも規定している可能性があることを示してきた。さらに我々は、EWS-Fli1は癌抑制遺伝子Rbに関わる細胞周期制御因子を標的とし、Rb経路を阻害することがES発がんに深く関与していることを明らかにした。これまでの研究結果から、EWS-Fli1の持続的発現がESの増殖などの悪性形質維持に必須であることが示唆される。一方、すでに欧米では、各種の癌患者を対象に、アンチセンスオリゴ(AS)を用いて特定の遺伝子発現を抑制する遺伝子治療が行われている。それらのASは核酸医薬品として開発されており、すでに臨床治験も行われている。これらの知見をふまえ、本研究の目的は、EWS-Fli1発現を効率よく抑制しうるASを設計し、そのESの新しいAS療法の開発につなげることである。昨年度には、EWS-Fli1 mRNA mRNAの高次構造をコンピューター解析し、ループが開いている部分を検索、DNase耐性phosphorothioate ASを合成した。各種のES細胞株を用い、細胞増殖を最も効率よく阻害するASを選択した。このASを用い、in vitroおよびin vivoで、ES肉腫細胞株に対する増殖抑制効果があることを確認した。これらの結果をふまえ、本年度においては以下の実験を行った。このASを用いてES肉腫細胞株に対するアポトーシス誘導効果について検討した。しかし、AS単独投与ではES肉腫細胞の増殖抑制は一時的であり、殺細胞効果は示さないことが判明した。そこで、各種抗癌剤との併用効果について検討した。その結果、トポイソメラーゼ阻害剤などの抗癌剤との併用効果があることが示された。ASを分子標的治療薬として臨床応用するに当たっては、AS単独投与より、これらの併用効果のある抗癌剤との同時投与がより有用であると考えられた。
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