研究概要 |
関節リウマチ(RA)で炎症の主座となる滑膜は関節包を裏打ちするように存在しているが、関節の運動の方向により滑膜は伸張されたり弛緩したりする。すなわち関節の運動に伴い滑膜は機械的ストレスに曝露される。RA患者の病態において関節に加わる機械的ストレスの意義を明らかにし、治療においてこれに対する予防あるいは対策の必要性を明らかにするのが本研究の目的のひとつである。まず関節滑膜における機械的(伸展)ストレスの関節破壊における役割を臨床的に明確にするために、骨びらんの形成部位とストレスのかかる方向との関連を、早朝のRA患者の手のレントゲン写真を用いて調査した。手指のピンチ動作において、MPおよびPIP関節にかかるストレスは、第1指では橈屈方向に、第2指においては尺屈方向に主なストレスがかかると考えられ、関節包にかかる伸展刺激としては第1指では尺側に、第2指においては橈側により強いストレッチ刺激が加わると考えられる。その結果、第1指では尺側に骨びらんの形成が多い傾向があり、第2指においては橈側により有為に骨びらんの形成が多いという結果が得られた。 続いて、滑膜細胞に機械的ストレス、特に生体内でかかっていると考えられる伸張ストレスを負荷する実験系を確立した。実験にはRA滑膜組織から得られる細胞を継代して用いた。Flexercellシステムを用いてコンピューター制御化に陰圧を加えることによって伸張ストレスをかけることが可能であった。伸張ストレスを加えた滑膜細胞はストレス方向に配列し機械的ストレスに応答していることが確認された。 また、機械的ストレスによって影響をうけると考えられる低分子量G蛋白質であるRho, Rac, Rasのprenylationを阻害するアミノビスフォスフォネートの一つであるアレンドロネートが関節リウマチにおける骨びらん形成の進行を遅延させることを明らかにした。
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