研究概要 |
本研究は有連続性神経損傷の治療に際し、神経バイパスグラフト法の有用性を検討することを目的とした。 本年度はラット坐骨神経を6-0ナイロン糸で結紮した神経不全損傷モデル(神経断端は完全に途絶していない)と坐骨神経を完全に切断後に盲端となったシリコンチューブを挿入する神経完全損傷モデル(神経断端を完全に途絶させる)を作製し、同一個体から採取した正中神経を用いてそれぞれをバイパス架橋した神経の再生過程を電気生理学的検討、toluidine bleu染色を用いた再生有髄軸索測定、neurofilament染色を用いて再生軸索の状態の検討を手術後2,4,6,8,12週で行った。当初予定の大腿神経は細く、バイパスグラフトが困難であったため、坐骨神経を用いた。 神経不全損傷モデル、完全損傷モデルの両方で、電気生理学的に6週時以降にM波を導出することが可能であった。再生有髄軸索数は神経バイパス架橋後12週で神経不全損傷モデルではバイパス部で約70%、架橋部より遠位の脛骨神経では約80%の軸索数を確認できた。神経完全損傷モデルではバイパス部で約50%、架橋部より遠位の脛骨神経で約60%の軸索数であった。Neurofilament染色では坐骨神経からバイパス部への良好な軸索再生が見られた。 本年度の成果から神経バイパスグラフト法は神経移植には及ばないものの、神経augumentationの一方法として十分な電気生理学的および組織学的再生が得られる方法と考えられた。平成16年度には軸索トレーサーであるBDAを用いた軸索トレース実験、ホスト神経の損傷の影響について検討し、再生軸索の由来、中枢側神経断端の関与について予定である。
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