研究概要 |
外傷性白質脱髄モデルと多発硬化症脱髄モデルを作成し、胎生期オリゴデンドロサイト分化制御因子のひとつであるNkx2.2と、オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)分化との関連及びサイトカイン、マクロファージ等の微小環境因子の関与を検討した。組織学的検討において、化学的脱髄モデルでは、非脱髄部のNkx2.2陽性OPCが、増加した後、脱髄部のNkx2.2陽性OPC・オリゴデンドロサイト(OL)双方が最大値となり、以後の再髄鞘化も認めた。一方、圧挫脱髄モデルでは、非脱髄部Nkx2.2陽性OPCは有意な増加は示さず、脱髄部では、Nkx2,2陽tSOPCが最高値を呈する時期が化学的脱髄モデルより遅く、値自体も低値であり、明らかなNkx2.2陽性OLは認めなかった。また、real time PCRによる解析では、圧挫滅脱髄モデルで損傷6時間後にIL-1βとIL-6の有意な増加を認めたのに対し、化学的脱髄モデルではこれらのサイトカインの有意な増加は認めなかった。以上の結果により、外傷性損傷による特異的な環境因子が、脱髄部周囲の増殖したOPCでのNkx2.2の発現を抑制し、OPC分化抑制にも関与している可能性が考えられ、その因子の一つとしてサイトカインの関与が考えられた。また、損傷組織、特に壊れたミエリンが軸索の再生を阻害することはよく知られている.圧挫モデルでは化学的脱髄モデルと比較して長期にわたりミエリン破壊物質が遺残していた.これらの所見から貧食細胞であるマクロファージの動態を調べたところ、圧挫モデルではマクロファージの誘導は遅くかつ単位面積あたりに誘導される細胞数も少なかった.両モデル間のマクロファージ遊走因子と血管透過性因子では、遊走因子にのみ差が認められていた.
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