研究概要 |
我々は1996年以降、膝前十字靱帯(ACL)断裂膝に対して、自家屈筋腱とともに生体吸収性のポリ乳酸製の糸で作成した靱帯補強材(PL-LAD)を用いたaugmentation法による靱帯再生術を施行している。これまでのところ、PL-LADによる障害はなく、良好な臨床成績を得ていることを報告しており、再建靱帯の生検組織の組織学的検索とコラーゲン分析の結果から、再建靱帯が経時的に本来のACLに近似した組織に変換されていくことを明らかにしている。 本研究は、十分な抗張力を有したPL-LADをACL再生の足場として応用することにより、靱帯組織を再構築し、臨床応用するための方法を確立することにある。 1x10^7細胞/mlのヒトACL線維芽細胞懸濁液に予めprewetした幅6mm,長さ100mm引張破断強度1180N,引張破断伸度19%のPL-LADを浸漬し振盪培養を行った後、周期的伸展刺激装置を用いて引張張力(30回/min,50N)を加えながら培養した結果、PL-LADの線維に付着し、線維に沿って伸張した線維芽細胞が観察された。しかし、基質の合成は不十分で生化学的分析を行うことはできなかった。 そこで、PL-LADをウサギの皮下に3週間埋め込んだ後に取り出した組織を周期的伸展刺激装置に装着し、引張張力(10回/min,0-0.05kg)を加えながら10日間培養した。その組織を光学顕微鏡による観察とコラーゲン分析を行い、比較検討した。現在のところ、両者間に明らかな差異は認められない。今後、培養条件、引張張力を変えて検討する必要があると考えている。
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