研究概要 |
今年度我々は,DNAアフィニティー精製法(DNA affinity purification ; DNAP)と近年著しく進歩したマススペクトロメトリーやマイクロシークェンシング法を用い、TGF-βBMPのシグナル伝達の新しい調節因子の検索を試みた。その結果、MCF7細胞の核抽出液の中から、TGF-β応答配列DNAの新たな結合因子としてHAT型コアクチベーターであるGCN5を同定した。 TGF-βBMPの細胞内シグナル伝達因子である。Smadは,。活性型複合体となり、核内へ移行し、p300やPCAFなどのコアクチベーターと結合して標的遺伝子の転写を活性化することが知られている。そこでまずGCN5とDNA(TGF-β応答配列)および各種Smadとの結合を調べたところ、GCN5はSmadとの結合を介してDNAに結合することがわかった。さらにレポーターアッセイを用いた検討で、GCN5は転写共役因子のTRRAPと協調的にTGFβシグナルを増強した。siRNA法を用いた検討では、GCN5とTRRAPそれぞれの発現を抑制すると、TGF-βによる転写活性の低下が認められた。GCN5はPCAFと類似した構造を持つが、PCAFがTGF-βシグナルを比較的特異的に促進するのに対し、GCN5はTGF-βだけでなくBMPのシグナル伝達を効率良く促進した。以上の結果から、GCN5はTGF-βスーパーファミリーのシグナル伝達系において重要な役割を果たすことが明らかになった。
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