平成15年度、DNAアフィニティー精製法とマススペクトロメトリーやマイクロシークエンシング法を用い、TGF-β/BMPのシグナル伝達の新しい調節因子の検索を試みた。その結果、新規特異型Smad結合蛋白質としてHAT型コアクチベーターGCN5を同定した。GCN5はSmadと直接結合し、ヒストンアセチル化活性を介して、TGF-βだけでなくBMPのシグナル伝達を促進することがわかった。 平成16年度は、新たに抑制型Smadを調節する因子を探索するための実験を開始した。まず基礎研究として、構造解析の応用と生化学的手法を用いたSmad7のドメイン解析をおこなった。具体的には、抑制型Smadの受容体との相互作用を担うMH2ドメインの中で相互作用に関与するアミノ酸を推定し、そのアミノ酸に変異を導入したSmad7を用いて、Smad7とのTGF-β、BMP受容体との相互作用とシグナル抑制機能を検討した。その結果、TGF-β系では4個のアミノ酸が相互作用、シグナル抑制に関与していたのに対して、BMP系では2個のアミノ酸が関与するのみであることを明らかにした。このことはSmad7によるTGF-β系、BMP系シグナル伝達抑制機構が同一のメカニズムでないことを示唆しており、またMH2ドメインレベルで違いが存在することを示唆している。
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