研究概要 |
これまでの我々の研究から、神経芽腫にBMPシグナル伝達経路が存在し、細胞増殖を抑制することが明らかとなったが、神経突起の伸長は細胞間で異なる応答牲を示した。本研究では、神経芽腫の発生・分化におけるBMPの応答性とp53の機能的役割について解析した。神経芽腫由来のSK-N-AS細胞をBMP2処理するとBMPシグナル伝達分子であるSmad1/5/8のリン酸化は処理後30分で顕著に認められ、細胞の増殖速度は抑制されたが、神経突起の伸長は観察されなかった。一方、神経芽腫におけるp53の局在牲は多くの場合、細胞質および核に存在することが知られている。SK-N-AS細胞ではp53は核には殆ど認められず、細胞質に発現していることが判った。BMP2処理によってその局在性ならびに発現量には変化は認められなかった。さらに、SK-N-AS細胞のp53は野生型p53と比べて蛋白質サイズが小さいことが判明した。また、p53のC末端を認識する抗体は、SK-N-AS細胞のp53を検出できないことから、このp53は核移行配列を含むC末端を欠損している可能性が示唆された。神経芽腫由来のSH-SY5Y細胞では、シスプラチンに応答してp53の安定化およびその標的遺伝子であるp21^<WAF1>,BAXの発現昂進を伴うアポトーシスの誘導が観察された。一方、シスプラチン処理したSK-N-AS細胞はG2/M期で停止しアポトーシスに陥らなかった。SK-N-AS細胞では、シスプラチンによるp21^<WAF1>の発現誘導は認められるものの、p53の安定化およびBAXの発現昂進は検出されなかった。従って、SK-N-AS細胞の薬剤耐性はp53の構造異常に起因すると考えられた。
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