【目的】外傷、移植、虚血などに伴う脳の障害に白血球の炎症反応が関係している。これは多核白血球を除去すると脳障害が減ること、白血球と内皮との接着を阻害する処置、例えば抗ICAM抗体の投与で脳障害が減少することなどから推測される。一方静脈麻酔薬プロポフォールにはエンドトキシン血症における白血球血管内皮接着と遊走の阻害作用がある。またプロポフォールには、脳保護作用があり、その作用は単に脳代謝の低下だけでは説明できない。それ以外の機序は解明されていないが、プロポフォールの脳保護作用が白血球の接着抑制による可能性がある。そこで今回生体顕微鏡を使って脳虚血後の白血球の接着、血管外遊走を観察し、これらに及ぼすプロポフォールの影響を調べる目的で研究を行った。【方法】家兎をペントバルビタールで麻酔し、頭頂骨に窓を作り、直径20-30μmの軟膜静脈を生体顕微鏡で観察した。映像をカメラで撮影しコンピュータシステムに記録した。白血球の可視化のために蛍光物質(rhodamine 6G)を静脈内投与し蛍光生体顕微鏡を用い撮影記録した。1分間のローリング数、100μmあたりの白血球接着数、血管外遊走数を測定した。左右の総頸動脈に糸をかけ、閉塞、再灌流を可能にした。脳虚血は両総頚動脈の閉塞と脱血による平均血圧の低下(50mmHg)により行った。再灌流は総頸動脈の閉塞の解除と返血により行った。準備終了後、麻酔をイソフルラン1.5%(I群、n=8)、あるいはプロポフォール6mg/kg/hr(P群、n=8)に変更した。血圧、ガス分析、脳軟膜静脈の記録を行った後、脳虚血を1時間施行した。1時間後再灌流し測定項目を1時間毎測定した。【結果】血圧、ガス分析値、白血球の接着、血管外遊走ともに2群間に差はなかった。【考察】今回の実験結果からプロポフォールの脳保護作用は白血球の接着、遊走の抑制を介していないと推測される。
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