全身麻酔薬の心電図における効果を観察するために、モルモットを用い、全身麻酔薬であるセボフルランおよびプロポフオール投与下にて主にQT間隔の変化について観察した。セボフルランは気化濃度1〜4%の範囲において、濃度依存性にQT間隔を延長させた。この延長効果は、セボフルランの投与を中止することで速やかに回復した。一方、プロポフォールは0.2〜2mg/Kgの単回投与においてはQT間隔に影響を及ぼさなかった。したがって、セボフルランによるQT間隔延長が、不整脈発生において何らかの役割を果たしているものと推察された。 また、アフリカツメガエル卵母細胞にQT延長の原因と考えられるHERG(Human Ether-a-go-go Related Gene)チャネルのcRNAを注入することでこのチャネルを発現させ、膜電位固定法によりHERGチャネル電流を測定し、これら全身麻酔薬(セボフルラン・プロポフォール)の影響について検討した。その結果、セボフルラン適用下においてHERGチャネル電流が抑制されることを観察した。この抑制は、定常状態(steady state)での電流においてより、細分極時のTail電流において、より強い抑制効果が確認された。一方、プロポフォールにおいては臨床使用濃度の範囲内においてはこのような抑制効果は確認することはできなかった。したがって、全身麻酔薬による不整脈の発生に関して、HERGチャネルが何らかの役割を果たしているものと考えられた。
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