全身麻酔薬による不整脈発生機序として、活動電位の持続時間延長が指摘されている。この活動電位の延長は、主としてHERG(Human Ether-a-go-go Related Gene)チャネルの抑制による再分極相の遷延によるものと考えられている。本研究において今年度は、モルモット単離心房筋を用い吸入麻酔薬であるセボフルラン、および静脈麻酔薬であるプロポフォールについてHERGチャネル電流に及ぼす影響について検討を行った。 方法は、1:モルモット(200-250g)よりペントバルビタール麻酔下にて心臓を摘出し、大動脈よりカニューレを留置し酵素(コラゲナーゼ、トリプシン)を灌流させ、単離心房筋細胞を作成し、2:Whole-cell voltage clamp法を用い細胞に脱分極パルスを加えることにより電流を記録した。HERGチャネル電流は特異的阻害薬であるE-4031にて分離した。3:セボフルランは灌流液にバブリングすることで溶解させ、プロポフォールはDMSO(Dimethyl Sulfoxide)に溶解させ適用した。 結果として、1:HERGチャネル電流はセボフルランにより抑制されたが、2:臨床使用濃度のプロポフォールでの抑制は非常に小さかったことが分かった。 心房筋は心室筋に比べて、HERGチャネルの発現が多いことが知られており、ペースメーカー細胞においても同様の機序により、全身麻酔薬により影響を受ける可能性が示唆された。
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