研究概要 |
肺サーファクタント類似ペプチドの発現と肺胞II型上皮細胞培養系の確立を主な目的にして,以下の実験を行った. (1)サーファクタント蛋白C(SP-C)類似ペプチドの大腸菌での合成 SP-Cに類似した配列の合成ペプチドを設計し,対応するDNAを発現ベクターに組み込み,大腸菌で発現させた.しかし合成ペプチドの毒性が高いために大腸菌が死んでしまい,収量が極めて少なかった. (2)肺胞II型上皮細胞の培養実験 高二酸化炭素症の炎症抑制効果を検討した.二酸化炭素濃度20%で培養した場合は正常二酸化炭素分圧(5%の)に比較して,培養液中の炎症性サイトカイン濃度が有意に低い値を示した.急性呼吸窮迫症候群患者でpermissive hypercapniaに基づいた人工呼吸法が生存率を改善する機序に,高二酸化炭素による炎症反応の抑制が関与している可能性が考えられた. (3)サーファクタントの活性と肺胞の大きさの分布の関係の検討 血清を混ぜたサーファクタントと正常なサーファクタントを投与した未熟ウサギ胎仔で肺胞の大きさの分布と換気量を検討した.終末呼気陽圧を加えて人工呼吸を行うと両者でほほ同じ換気量が得られた.しかし,血清を混ぜたサーファクタントでは肺胞の大きさの分布が小さいものと大きいものに分かれて2峰性を示したのに対し,正常サーファクタントでは均一な肺胞の大きさを示した.サーファクタントの阻害が人工呼吸による肺障害を悪化させると考えられた. (4)ラットの虚血再灌流肺障害モデルの作成 肺移植ラットでサーファクタント補充の効果を検討する前段階として,ラットで虚血再灌流障害モデルの作成を試みた.
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