研究概要 |
麻酔メカニズムを解明するにあたって、内外の研究の趨勢に先駆けて特異説の矛盾を指摘し、もはや単一の神経受容体への麻酔作用では麻酔メカニズムを説明できない点を指摘し、複数の受容体にわたるシステムを研究対象に絞り込む必要性を本研究の出発点とした。図らずしも、今年度中盤、同様の指摘がEdmond I Eger, IIらによってAnesth Analg 2003 97:718-740(Inhaled Anesthetics and Immobility : Mechanisms, Mysteries, and Minimum Alveolar Anesthetic Concentration)に掲載されるに至り、本研究の先駆性を確認するに至った。この総括を踏まえ、今年度、研究対象タンパク質に再検討を加え、Propofol-Alubuminに絞るに至った。 本年度の成果は、モデルシミュレーション計算のための計算ワークステーションおよびMolecular Operating Enviroment(CCG, Canada)を整備し、統合科学計算システム稼動をさせた。麻酔薬・タンパク質複合体で3次元構造が明らかになっているPropofol-Alubuminに着目し、ドッキングシミュレーション計算によってPropofol-Alubumin複合体の3次元構造を予測した。計算シミュレーションによる予測構造とX線構造解析の結果を比較検討し、シミュレーションの構造予測精度を検証した。得られた複合体の3次元構造からPropofol-Alubumin結合をもたらす相互作用を解明した。相互作用要素は、Propofol上の水酸基がSer579へ水素結合し、Propofol上のisopropyl基がAlubumin結合ポケットと疎水結合し、Propofol芳香族環へLeu532が垂直に配位することを見出した。
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