揮発性麻酔薬は種々のイオンチャネルや酵素に作用しその活性を修飾する。我々はこれまでKチャネルの麻酔薬による抑制の分子メカニズムを研究してきた。Kチャネルの変異体を解析することにより麻酔薬の作用部位を同定し、蛋白に対する直接作用だという状況証拠とした。本研究はさらに麻酔薬と蛋白との直接の結合を示すことを目的として開始した。 先年度はホタルの発光酵素であるルシフェラーゼが実際にいくつかの揮発性麻酔薬で活性が抑制されこの酵素を用いて結合定数を測定できる可能性を示すことが出来た。本年度はそれに引き続いて精製したルシフェラーゼを金の薄膜にアミンカップリング法によって固相化し、まず基質であるルシフェリンの結合活性を測定した。ところが測定された結合定数(Kd)は2-4mMとルシフェラーゼのKm値30uMをはるかに超える値となり、固相化により失活したことが考えられた。そこで同じ酵素をCMセファロースのビーズに1)アミンカップリング法 2)リガンドチオールカップリング法 3)表面チオールカップリング法の異なる方法によりそれぞれアミノ基、SH基、カルボキシル基を修飾することにより固相化したのちビーズの酵素活性を測定した。いずれの方法でも固相化されなかった酵素活性はほとんどなく、ほぼ完全に固相化されたにもかかわらず、ビーズには元の酵素活性の1/1000以下の活性しか見られなかった。このことから活性にはこれらの官能基の全てが必要であることが考えられた。従ってこの酵素を用いた表面プラズモン共鳴法による結合定数の測定は困難であると結論された。
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