研究分担者 |
高橋 成輔 九州大学, 大学院医学研究院, 教授 (30038723)
瀬尾 憲正 自治医科大学, 麻酔科学・集中治療医学講座, 教授 (40093257)
津崎 晃一 慶応義塾大学, 医学部, 助教授 (90138107)
森田 潔 岡山大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (40108171)
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研究概要 |
2003〜2005年に全国の麻酔科認定施設で発生した手術手技,特に手術が原因の出血に起因する心停止ならびに高度低血圧症例に関するアンケート調査,集計,解析を行った. 手術による大量出血(交通外傷や大動脈瘤破裂などにより術前から出血が発生していた症例は除く)は,手術室において発生した心停止を初めとする危機的偶発症に起因する術後7日以内の死亡の原因として各々13%,17%を占めていた.また、高度低血圧の原因としては27%と第1位を占めていた.術中大量出血による偶発症の結果,全国では2.2日に1例の割合で死亡者が出ていた.本調査は危機的偶発症のみを対象としているので,危機的状況には至らなかった術中大量出血は数十倍の頻度で発生しているものと推測される. 出血の原因として、癒着や浸潤などの不可抗力,外科医の判断や手技上の問題,麻酔管理上の問題が重複して指摘され,出血による偶発症が複合的な要因で発生していることが示された.さらに,血液供給に問題があったと報告された症例が約25%を占めたが,交差適合試験が省略されたのは10%,適合赤血球製剤の輸血は1%に止まった.さらに,約2/3の症例では術前から大量出血が予測されていたにもかかわらず,偶発症が発生していることも判明した. このような集計結果を受けて,日本麻酔科学会ならびに日本輸血学会の合同で「危機的出血への対応ガイドライン」が作成された.院内輸血体制の整備,指揮命令系統の確立,緊急避難的措置としての交差適合試験の省略ならびにABO異型適合血輸血の推進を強調した内容である.また,急速輸血装置の整備とその使用法の遵守,大量輸血にともなう合併症についても言及されている. 今後,異型適合血輸血の推進による偶発症削減効果,ならびに副作用としての遅延性溶血反応の発生状況に関する全国調査が必要と考えられる.
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