腎虚血再潅流障害において転写因子であるNFkBの活性化と、それに伴うアポトーシス誘導が関与していることが動物実験と培養細胞を用いた実験の両方において報告されている。一方、吸入麻酔薬イソフルランは腎虚血再潅流障害において腎保護効果を有することが示唆されている。 我々は、イソフルランが腎虚血再潅流時のNFkB活性化に及ぼす影響を検討するために、ブタ上皮細胞由来のLLC-PK1を用い、ミネラルオイルによってシミュレートされた虚血再潅流モデルを作成し、イソフルレン前処置がNFkB活性を抑制するかについて検討した。吸入麻酔薬であるイソフルランを細胞に30分間前処置すること虚血刺激によって増加するNFkB活性が有意に抑制されることが観察されたことから、このNFkB活性抑制作用がアポトーシス誘導を抑制し、腎保護効果として作用している可能性があることを見出だした。 イソフルレンがNFkBシグナル伝達系のどのレベルにおいて作用しているかについては未だ不明であるため、現在、腫瘍壊死因子TNFαによるNFkBシグナル伝達-アポトーシス誘導系を作成し、イソフルレン前処置がLLC-PK1においてNFkB活性化上昇を抑制するかを確認している。また、ラット虚血再灌流モデルに対してもTNFαによるNFkBシグナル伝達-アポトーシス誘導系においてイソフルレン前処置が腎組織中のNFkB活性に対して抑制効果を発揮するかを観察している。今後、各種阻害薬を用いることでイソフルレンのNFkBシグナル伝達系への作用点をより明らかにできると考えている。
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