研究概要 |
短時間の虚血に曝露することで、その後の虚血障害が軽減される現象を虚血性プレコンディショニング作用(IPC)といい、この現象は、心臓・肝臓・腎臓など多くの臓器で認められている。また虚血前に薬物を投与することによりIPCと同じような虚血再灌流障害を抑制する現象を薬理学的プレコンディショニング作用(PPC)と呼び、イソフルランによるPPCが心臓・肝臓などの臓器で認められている。しかし、腎臓に関しては今までPPCに関して存在がはっきり証明されていない。そこで今回腎臓に対するイソフルランのPPCに関し検討を行った。【方法】Wistar系雄性ラットを以下の4群に分け、再潅流24時間後に血中尿素窒素(BUN)とクレアチニン(Cr)値を測定し腎障害の指標とした。さらにメカニズムの探究を目指して腎組織においてストレスで活性化されるキナーゼ(JNK,p38,ERK)の活性化を測定した。A群:イソフルランの投与、虚血を行わず開腹操作のみ行う群。B群:イソフルランを1MACで20分間投与し虚血を行わず開腹操作のみ行う群。C群:マイクロクリップを用い両側腎動静脈の虚血のみを40分間行う群。D群:イソフルランを1MACで20分間投与した後にマイクロクリップを用い両側腎動静脈の虚血を40分行う群。【結果】BUN、Cr共にA、B群と比較してC、D群は有意に高値を示した。またBUN、Cr共にD群でC群よりも有意に低値を示した。腎の虚血再灌流によりJNK,p38,ERKの活性化は亢進したが、イソフルランの投与によってJNKとERKの活性亢進が抑制された。【結論】腎臓に対してもイソフルランのPPCはあると考えられた。またこのメカニズムにストレスで活性化されるキナーゼのうちJNKとERKが関わっていることが示唆された。
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