研究概要 |
虚血性脊髄障害は、蘇生や大血管手術の重大な合併症の一つである。脊髄虚血に対する神経保護のため種々の薬物が試みられているが、いまだ臨床応用可能な薬剤は見つかっていない。 一方、侵襲に対する保護物質として神経成長因子GDNFが近年注目されてきた。GDNFは、生理的因子であるが、臨床薬理学的に投与し難い物質である。我々は、免疫抑制剤FK506がGDNFの産生を増強するという仮説に基づき、ラット脊髄虚血モデルを用いて、その効果を組織学的に検索した。 1)AstrocyteがGDNFの産生能のを有していることを、mRNAレベルのみならず、蛋白レベルで証明できた(J Neur Sci Res,2003)。 2)GDNFの測定法を開発し、脊髄虚血後のGDNFの詳細な動態を証明した(Acta Neurochir Suppl,2003,J Neur Sci Res,2003)。 3)FK506の神経保護作用の検証を行っているが、FK506にDrug-induced hypothermiaを起こす可能性が示唆された。そのため、虚血後の体温変動を明らかにし、体温を一定に保つことで、その保護作用に違いがあるかどうか検索中である。
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