研究概要 |
脊髄虚血に対する神経成長因子Glial cell line-derived neurotrophic factor (GDNF)の神経保護作用の有無と、生体内での役割を明らかにするために、ラットの一過性脊髄虚血モデルを用いた実験を行い、以下の結果を得た。 脊髄虚血後のGDNFは、虚血再灌流2時間後に一過性の増加を認めるが、24時間後には前値に戻り、72時間後に再び増加する。虚血再灌流2時間目のGDNFの増加は、α運動神経において、72時間後の増加は、神経膠細胞において認められた。GDNFが虚血侵襲後増加したのは、虚血によりGDNFの必要性が高まる、つまり、GDNFが生理的な抗虚血作用を担っている可能性を示唆する。一方、GDNFが虚血72時間後に再び増加するのは、虚血傷害に対する神経保護というより、虚血後の神経機能回復になんらかの役割を担っている可能性があると考えられた(Tokumine J, Acta Neurochir [Suppl] 2003)。 比較のためGDNF以外の神経成長因子の虚血後の動態を、Brain-derived neurotrophic factor (BDNF)とNeurotrophin3(NT-S)について調べた。BDNFは、虚血後徐々に増加し、24時間以降72時間まで高値を保っていた。一方、NT-3は、変化がみられなかった(Tokumine J, J Neurosci Res 2003)。 以上より、GDNFは、他の神経成長因子とは異なる動態を示し、虚血後早期の神経保護に関係している可能性があることが分かった。 次に、GDNFを増加させる薬物FK506を使用し、虚血による神経障害保護作用を動物実験で検証した、虚血直後のFK506の投与により、神経学的予後(虚血24時間及び48時間後)の明らかな改善をみた(発表予定)。 GDNFは、神経保護作用をもつ生理活性物質である。
|