研究概要 |
平成16年度 脊髄後角ニューロンにおける細胞外記録とin vivo patch clamp記録(川真田,金谷) 標本作製は平成15年度と同様とした.すなわち,生後1〜14日(P1〜P14)のラットをウレタン(2.4mg/kg)の腹腔内投与により麻酔した.自発呼吸下,あるいは人工呼吸下に,腰部脊髄(L2〜5)を露出し,固定器に脊柱を固定した.脊髄表面を95%酸素と5%二酸化炭素で飽和したクレブス液で潅流し,第4脊髄後根神経の脊髄入力部の軟膜を切除した.また新生児ラットと比較するため,同様のウレタン麻酔下(1.2mg/kg)の成熟ラットで同様の記録を行った. 細胞外記録:記録用タングステン電極を刺入し,足底部に皮膚受容野を持つ脊髄後角wide-dynamic-range(WDR)ニューロンのの単一活動を導出した.von Frey,ブラシ,動脈クリップを用いた非侵害性,および侵害性刺激を行い,ニューロンの活動電位応答を記録した.次いで受容野中心の皮膚,皮下,筋膜,筋肉を5mm切開し,7-0ナイロン糸で1針縫合した.切開前,後の自発活動を1時間記録した.1時間後,von Frey,ブラシ,動脈クリップを用いた非侵害性,および侵害性刺激を行い,応答を記録した.さらにKrebs液にAPV(50μM),MK-801(50μM),CNQX(20μM)を投与し,自発活動および刺激に対する応答を記録した. In vivo patch clamp記録:ガラス電極を脊髄表面から20〜100μmまで刺入し,脊髄後角膠様質ニューロンからホールセルパッチクランプ記録を行った. 細胞外記録では,皮膚切開により幼若ラットおよび成熟ラットともに非侵害,侵害刺激に対する応答が増強したが,これらの増強が幼若ラットではAPV, MK-801の投与で抑制され,成熟ラットでは影響を受けなかった.CNQXの投与は幼若ラットおよび成熟ラットともに増強した反応性が現弱した.ホールセルパッチクランプ記録では,幼若ラットは成熟ラットと異なり,自発性の高振幅,高頻度のinhibitory postsynaptic current(IPSCs)を認めないニューロンが多数を占めた.以上より,幼若ラットは脊髄後角の抑制性シナプス形成やネットワークが未発達なため,成熟ラットに比べて術後痛に対する感受性が高く,幼若ラットの術後痛にはNMDAレセプタの活性化も関与していることが示唆された.
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