研究概要 |
本研究は,平成16年度までに以下の事項を明らかにした. 1)ラットにCLP手術を行った後,8時間あるいは16時間経過した時点でそれぞれ早期あるいは後期敗血症が発生している.2)摘出横隔神経-横隔膜標本を用いた収縮実験において;2-a)rocuronium, pancuroniumおよびd-tubocurarineは収縮力をdose-dependentに低下させ,また早期および後期敗血症はそれらのdose-response curveを右方変移させる,2-b)早期および後期敗血症群におけるrocuronium, pancuroniumあるいはd-tubocurarineの筋弛緩作用のdose-response curveの右方変移は,pancuroniumで最も大きくd-tubocurarineで最も小さい,c)後期敗血症群におけるそれらの右方変移は,早期敗血症群におけるそれらと比較して大きい.3)摘出横隔神経-横隔膜標本を用いた筋弛緩薬非存在下での神経筋接合部の電気生理学的実験において,後期敗血症群では非敗血症群よりも終板電位の振幅およびアセチルコリン放出素量が増加している. 平成17年度はこれらの成績をふまえ,以下の電気生理学的研究を行った. 1)Cut fiber preparationで不動化した摘出横隔神経-横隔膜標本を用いて,各非脱分極性神経筋遮断薬の終板電位に対する作用を検証した.後期敗血症は,終板電位の振幅およびアセチルコリン放出素量を低下させるrocuronium, pancuroniumおよびd-tubocurarineの作用性(%換算,dose-response relationship)を変化させなかった.この結果は,後期敗血症病態によるアセチルコリン放出素量増加に起因する終板電位振幅の増加が非脱分極性神経筋遮断薬の作用低下の主な原因であることを示唆するものである.2)摘出横隔神経-横隔膜標本を用いて,後膜アセチルコリン感受性に対する後期敗血症病態の影響を検証した.後期敗血症群では非敗血症群よりもアセチルコリン電位から得られた後膜アセチルコリン感受性が低かった.この成績は,敗血症病態による非脱分極性神経筋遮断薬の作用性低下とは逆の方向性のものである.現在,非脱分極性神経筋遮断薬の後膜アセチルコリン感受性抑制作用に対する敗血症病態の影響を検証中である.
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