研究計画2年目である本年度は、昨年度より引き続きオバラミン(ovalbumine)を用いたモルモット喘息モデル、また主流煙たばこ曝露器により曝露を行ったモルモット煙草喫煙モデル(COPDモデル)を用いて研究を行った。病理学的な検討では、モルモット喘息モデルでは、オバラミンによる発作誘発後、気管肺への好酸球、炎症細胞の浸潤像、肺胞浮腫を認め、喘息モデルとして適切であることを証明した。同様に4週間以上曝露したCOPDモデルでは、肺胞壁の破壊、好中球、マクロファージの浸潤像を認め、これらは曝露期間依存性に増加した。臨床的に強力な気管平滑筋弛緩作用のある、吸入麻酔薬は、モルモット煙草モデルにおいて、アセチルコリンに対する気道収縮を著明に抑制したが、COPDモデルではこの効果は減弱した。モルモット煙草モデルにおいて、気道過敏性は、好酸球から放出されるサイトカインにより、リモデリングが生じ、気道過敏性を獲得する。このこととは対照的に、COPDモデルでは、好中球が炎症細胞の主体となり、気管に分布する遠心性Cファイバーに含まれる、タキキニンの増加が気道過敏性との関連が指摘されている。このように気道過敏性の獲得には、両モデルで差異があるが、麻酔薬の平滑筋弛緩作用がどのようにして異なるのかを、両モデルの摘出気管標本において検討を加える予定である。臨床麻酔では、脳神経外科手術に置いて患者を意図的に過換気に、すなわち低二酸化炭素血症で管理する場合がある。α_2受容体刺激薬は低体温で管理する、脳神経外科患者の術後のシバリング抑制などの点から、臨床使用が検討されている。研究初年度は、α_2受容体刺激薬を投与中の、正常換気でのアセチルコリンによる気道収縮曲線を求めたが、本年度は過換気状態での検討を行った。研究結果は、2005年10月に行われるアメリカ麻酔学会で発表を行う予定である。
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