研究概要 |
脊髄虚血後の運動機能及び神経細胞死に対するδオピオイドアゴニストであるSNC80の効果を検討した。脊髄虚血は大腿動脈より下行大動脈にフォガティーカテーテルを挿入し、また中枢側の血圧を脱血により40mmHgに調節した。SNC80は9分または11分の脊髄虚血の15分前にくも膜下投与した。くも膜下カテーテルは虚血4-7日前にあらかじめ挿入し、神経学的異常がないことを確認した。運動機能の評価は再灌流48時間後にBasso, Beattie, Bresnahan(BBB)スコア(21点法)を用いて行い、組織学的検討はL4脊髄切片のHE染色を行った。灰白質傷害として前角の正常神経細胞数を計測し、白質傷害として、前・前側索、錐体路(後索)の空胞化の割合の合計を算出した。結果、SNC80は9分、11分虚血後の神経細胞数を増大させることより、灰白質に保護的に作用した。白質の空砲化(白質傷害)もSNC80の投与により軽減された。ただし、運動機能については、9分虚血にのみ有効であった。以上よりδオピオイドアゴニストであるSNC80のくも膜下投与は灰白質及び白質の傷害を軽減することが明らかになった。
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