ラット脊髄虚血モデルにおいて、選択的デルタオピオイドアゴニスト(SNC80)のくも膜下投与が、脊髄虚血後の神経障害に対して保護作用を示すかを検討した。ラット脊髄虚血モデルは、2Frのフガティーカテーテルを大腿動脈より下行動脈まで挿入し遮断し、また、中枢側血圧を脱血により一定とした。SNC80の投与は、くも膜下投与とした。 研究1:SNC80のくも膜下投与の脊髄虚血後の神経傷害について検討した。9分および11分の虚血では虚血15分前にSNC80を投与した場合、有意に正常神経細胞数を温存した。本研究では、灰白質傷害について検討した。 研究2:ラット脊髄虚血モデルでの白質傷害の程度を検討した。白質傷害はHE染色での空砲化率とamyroid precursor proteinの免疫染色にて行った。脊髄虚血後24時間での空砲化の増大とamyroid precursor proteinの沈着がみとめられ、灰白質傷害のみならず白質傷害も発生していることを報告した。 研究3: SNC80の脊髄虚血後の白質傷害への影響を正常体温と軽度低体温下で検討した。結果、常温下ではSNC80は灰白質、白質ともに有意に傷害を軽減したが、軽度低体温下では白質傷害のみを軽減した。SNC80は脊髄虚血後の白質傷害にも有効であることを報告した。
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