初代培養神経細胞を用いて、ミトコンドリア膜電位とアポトーシスの関連について検討した。 生体における脳虚血状態を培養細胞で再現するために、無酸素無糖状態(OGD)を作る専用の培養器を用いて、一定時間OGD後のミトコンドリア膜電位の変化を観察した。ミトコンドリア膜電位は膜電位依存性色素JC-1を用い、蛍光顕微鏡下で観察し、評価した。細胞の生存はLive/Dead kitにより、蛍光顕微鏡下で観察することにより判断した。アポトーシスの発生はTUNEL法により検出した。その結果、30分のOGDでは、細胞壊死(necrosis)は起こらないが、3時間の再酸素化後には、アポトーシスを起こすものが多く見られた。これらの神経細胞の多くは、再酸素化時にミトコンドリア膜電位は過分極していた。一方、90分のOGDでは、necrosisを起こすものが多いことが示された。これらの細胞のミトコンドリア膜電位は脱分極していた。(文献1)。これまでの観察ではミトコンドリア膜電位は再酸素化時に観察していたが、OGDも含めて時間経過を追って観察すると、OGDの間は脱分極するものが多く見られた。したがって、再酸素化時に過分極するものでもOGDにより一過性にミトコンドリア膜電位は脱分極し、その後、再分極、過分極といった変化を示すことが明らかになった(文献2)。これまでの検討では、OGDの時間の違い、すなわち、エネルギー基質の欠乏度の違いにより、ミトコンドリア膜電位の時間経過が異なることが示された。今後さらにミトコンドリア膜電位が1義的に細胞死のモード(apoptosisとnecrosis)を決定するかを明らかにしたい。
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