研究概要 |
本年度は、麻酔薬として臨床使用されているpropofolの脳保護作用を検討した。初代培養海馬神経細胞を用いて無酸素無糖培養(OGD)を行った。この実験系を脳虚血に類似の状態とした。培養細胞には、0.1μM、1.0μMのpropofolを与えた。30分、90分OGDの後、ATP量(Luciferin-luciferase反応法)、ミトコンドリア膜電位(膜電位依存色素JC-1)、神経細胞の生死(Calcein AM/Etidium)、Apoptosisの発生(TUNEL)を観察、定量した。その結果、1.0μMpropofolにより、900GDによる急性の神経細胞死を抑える作用が観察された。しかし、24時間後に観察されるapoptosisの発生には影響を及ぼさず、apoptosisの発生はpropofolにより抑えられないことが観察された。ATP含有量は、300GD,900GDにより段階的に減少することが観察されたが、propofolによりその含有量の減少を抑えることはできなかった。したがって、急性の神経細胞死の抑制効果は、エネルギー消費を抑制することではなく、他の原因、free radicalに対する作用などが考えられた。ミトコンドリア膜電位に対しては、有意な差は認められず、300GDでは、propofolに負荷の有無によらず過分極が認められ、これは、24時間後のapotosisが多く認められた。以上の結果より、propofolは、急性の神経細胞死を抑え、神経細胞死を遅らせる効果があり、therapeutic windowを提供すると考えられた。しかし、単独では、神経細胞保護効果は少ないものと考えられた。
|