血液脳関門(BBB)の構成物質としてのmdrla遺伝子由来P-glycoproteinは、内在性物質・外来物質が脳組織への進入することを調節する働きを有している。しかし現在のところ脳虚血という環境下でのmdrla遺伝子由来P-glycoproteinの働きは明らかにはなっていない。今年度はmdrlaノックアウトマウスにより局所脳虚血モデルを作成、そのダメージの評価、またその機序の探求としての実験を主に行ってきた。(1)モノフィラメントによるマウス中大脳動脈閉塞:麻酔下にてレーザー・ドップラーフローメトリーのプローブ頭蓋骨に固定。外頚動脈からシリコンコーティングした6-0モノフィラメントを挿入。フィラメントを押し進めて内頚動脈を経てウイリス輪の中大脳動脈起始部あたりで留置。30分放置後、フィラメントを引き抜き血液再灌流。48時間後に脳を取り出しNeuN染色にて梗塞領域を評価。(2)中大脳動脈閉塞後、3時間、6時間、12時間、24時間、48時間にて脳組織を取り出しbcl-2、caspase 3、BDNF、NGF等アポトーシスや組織修復などに関連する物質を免疫組織学的染色を施して検索。結果、局所脳虚血において、mdrlaノックアウトマウスは正常マウスと比べて有意に梗塞領域が小さかった。bcl-2、caspase 3等における評価では、正常マウスのほうがノックアウトマウスよりもアポトーシスによる細胞死が多い傾向がみられた。今後は他の因子を検索し更に詳細な機序を追究していく予定である。
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