我々はmdr1aノックアウトマウスを利用して中大脳動脈をフィラメントで閉塞させる一過性局所脳虚血(MCAO)モデルを作製、脳梗塞体積に関してワイルドタイプマウスとの比較をした。結果、ノックアウトマウス群の方がワイルドタイプ群より有意に脳梗塞領域が小さかった。また解剖学的に脳血管の構築の違いや血圧・動脈血の性状に関して両群間に差があるのかを検索した。それらはすべて有意な差を認めなかった。従ってmdr1a由来のP-glycoproteinは、脳虚血に対してサイトカインや炎症性細胞など神経細胞障害の因子の集積を促すのか、または神経保護作用の内因性物質の侵入を阻害する働きがあることが示唆された。一方、新規VIP(vasoactive intestinal peptide)およびPACAP(pituitary adenylate cyclase-activating peptide)の誘導体である、Ac-PACAP、IK312548の虚血性脳障害に対する神経保護効果を2種類のマウス脳虚血モデルを用いて検討した。両総頚動脈閉塞(2VO)モデルではAc-PACAP、IK312548とも海馬CA1領域の細胞脱落を有意に減少させた。MCAOモデルでも、両誘導体とも梗塞巣を有意に減少させた。また、培養細胞でのグルタミン酸誘発脳神経細胞死に対するAc-PACAPの神経保護効果を検討。Ac-PACAPはグリア細胞の存在下にてIL-6やGM-CSFを放出させながら、神経保護効果を示した。
|