研究概要 |
平成15年度の研究成果で,パラコートの毒性発現に係わるミトコンドリア外膜酵素NADH-quinone oxidoreductase_m(NQO_m)の構成成分に,外膜蛋白質であるvoltage-dependent anion channel (VDAC)が含まれていることが,単離ミトコンドリアでの酵素活性実験により明らかとなった。そこで本年度は,細胞内での酵素活性とVDAC蛋白質との関連を検討した。また,NQO_mのVDAC以外の構成成分についても探索を行った. HeLa細胞にVDAC発現プラスミドをリポフェクション法により導入したところ,VDACが対照細胞の2〜3倍発現している細胞を得ることができた。この高発現細胞にパラコートを添加し,細胞内で生成する過酸化水素をdichlorofluorescin-diacetateで検出したところ,細胞質に粒状ないし糸状の形状を示す蛍光が見られた。このとき,細胞面積あたりの蛍光強度は対照細胞に比べVDAC導入細胞の方が高かった。以上のことから,パラコート添加により,NQO_mはミトコンドリア上で活性酸素を生成し,その活性とVDAC量には正の相関が見られることが明らかとなった。 次にラット肝より調製したミトコンドリア外膜からNQO_mを抽出してPVDF膜にプロットした後,NADHとパラコートを含む緩衝液中での酵素活性をnitroblue tetrazorium(NBT)還元法によって測定した。この反応はVDAC阻害剤および抗VDAC抗体のみならず,VDACと複合体を形成するとされているAdenine nucleotide transporterの阻害剤atractylosideでも抑制された。以上の結果より,NQO_mにはミトコンドリアのpermeability transition poreの構成蛋白質が関与していることが明らかとなった。
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