研究概要 |
目的:腎癌のインターフェロンα(IFNα)感受性を制御する遺伝子を検索するため、腎癌細胞においてIFNαによる遺伝子発現の静的動的変化を基礎的、臨床的に検討する。 対象と方法:臨床的検討は腎癌切除組織14例、腎正常部分4例で、Trizol法でtotal RNAを抽出し、3,840クローンのマイクロアレイに^<33>Pでラベル下にハイブリダイズした。シグナルはAISarrayVisionで検出し、GeneSpringにて解析した。4例においては治療的にIFNを投与したため、その反応性と遭伝子発現パターンを検討した。 一方、in vitroでは予め分類したIFNα感受性株、耐性株の既知のIFNαシグナル伝達分子Jak、TyK、STAT1、STAT2、ISGF3の発現をPCR、ウェスタンブロットにて検討した。またIFNα1,000IU/ml加に培養し、3、6、12、24時間後の遺伝子発現の経時的変化を20,000クローンのマイクロアレイ(CodeLink社)により網羅的に検索し、GeneSpringを使用して解析した。 結果:(1)臨床的検討:腎癌組織と正常腎の遺伝子発現profileでは、これら2群を明らかに分類できる遺伝子セットが洗たくできた。これらの腎癌で発現の亢進している遺伝子セットの中でさらにIFNα反応性との関係を検討した。IFNαを腎癌転移巣4例に治療投与したところ、2例に有効、2例に進行を認めた。これら2群を識別できる遺伝子セットの選択が可能であり、IFNαの有効性を予測する可能性が示唆された。一方、(2)基礎的検討ではIFNαの添加により、感受性株SKRC-17、-59において、耐性株SKRC-12、-33には認められない3遺伝子の経時的発現増加が認められた。これらの遺伝子の中にはすでにIFNαにより誘導される遺伝子が含まれており、腎癌細胞のIFNα感受性に関連する分子である可能性が示唆された。さらにこれらの遺伝子発現を定量的に確認し、発現量の制御とIFNα感受性の変化を検討する予定である。
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