研究概要 |
本研究では野生型より著明に多くの肥満細胞の集積が確認されているrasH2マウスにW/W^Vマウスを交配させることで肥満細胞の欠失したW/W^VrasH2マウスを作製し、W/W^VrasH2マウスとそのlittermateであるrasH2マウス、W/W^Vマウスや野生型にBBNによる膀胱化学発癌を行うことで肥満細胞の膀胱発癌に対する役割を検討し、ヒト膀胱癌における肥満細胞関与のメカニズムを解明することを目的とする。 ヒト膀胱癌において、間質の肥満細胞数をtoluidine blue法にて測定した(/1視野:X400)。正常上皮では1.95±1.28個、膀胱癌grade1では5.58±6.06個、grade2では10.71±5.21個と、悪性度が増すにつれて膀胱癌直下間質の肥満細胞数が有意に増加することが示された(正常上皮VS grade1:P<0.01,正常上皮VS grade2:P<0.0001,grade1 VS grade2:P<0.0001)。 また深達度においてはpT1では2.0±1.16個、pT2では7.48±6.22個、pT3では8.44±6.46個とpT1からpT2へ、つまり浸潤癌への移行の過程で肥満細胞数が有意に増加した(正常上皮VS pT1:P=Ns,正常上皮VS pT2:P<0.0001,正常上皮VS pT3:P<0.0001,pT1 VS pT2:P<0.05,pT1 VS pT3:P<0.05,pT2 VS pT3:P=NS)。 肥満細胞の集積は膀胱だけではなくヒトの様々な臓器の癌において多数認められることから、膀胱癌のみならずヒトの癌における実験、治療モデルとしても資するものと考える。
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