研究概要 |
われわれはTNF-a欠損マウス、および野生型に対しBBN(N-Butyl-n-butanol-nitrosamine)を用いた膀胱化学発がん実験を行った。6週齢マウスに0.05%BBN含有水を10週間経口自由摂取させた。BBN投与終了3-24週まで3週おきに尿路を摘出し、膀胱重量、腫瘍個数を測定した。雄ではヘテロマウスの64.3%に対して野生型では100%に膀胱癌を認めた。雌ではヘテロ31.6%に対して野生型60.0%に膀胱癌を認めた。したがって内因性TNF-aの欠損によりBBNによる膀胱発癌が抑制されたことは、膀胱癌の治療のひとつとして抗TNF-a療法の可能性が示唆された。 膀胱癌から同定されたH-ras遺伝子は、ファルネシル化を介して炎症への関与が指摘されている。また肥満細胞のsurvivalのためにはrasシグナル伝達の活性化は必須である。ヒトc-Ha-ras導入マウスrasH2での二段階皮膚発癌実験では導入遺伝子のみに突然変異が認められている。この原因が、ヒトとマウスのc-Ha-rfl5におけるcodonの違いによるのか、マウスc-Ha-rfl、y導入マウスmrasを作成し、二段階発癌実験を行った。rasH2は野生型より腫瘍個数が有意に多く(31.2+11.2 vs.3.8+3.9)、腫瘍発生時期も有意に早かった(11週vs.3.5週)。しかしmrasでは腫瘍個数および腫瘍発生時期に野生型との違いを認めなかった。 c-Ha-ras、codon61の突然変異はrasH2では導入遺伝子であるヒトc-Ha-rasのみに認められ、固有遺伝子であるマウスc-Ha-rasでは認められなかった。それに対してmrasでは突然変 異がマウスc-Ha-rasに認められた(Cancer Science, accepted)。この結果からヒトとマウスのcodonの違いがDMBAに対する発癌感受性に寄与していると考えられた。
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