1)アンドロゲンレセプター(AR)が発現していないヒト前立腺癌細胞株DU-145にARのcDNAをトランスフェクションし、ARが恒常的に発現している細胞株DU-145/ARを用い、それらの細胞表面の各種インテグリンの発現、細胞外マトリクスに対する接着能や浸潤能に比較検討を行った。 (1)DU-145/ARはDU-145と比較してα6とβ4インテグリンの発現が低下し、α2とα5インテグリンは逆に発現が亢進した。しかしα3とβ1インテグリンの発現には差を認めなかった。 (2)細胞外マトリクスに対する接着能に関しては、DU-145/ARはDU-145と比較してマトリゲル、フィブロネクチン、ラミニン-1及びラミニン-5に対して有意に接着能が低下した。しかしDU-145/ARは、I型コラーゲンに対しては逆に有意に接着能が亢進した。DU-145/ARはフィブロネクチンに対する浸潤能も低下したが、細胞運動能には有意な差を認めなかった。しかしなからラミニン-1に対しては浸潤能も細胞運動能もDU-145/ARが亢進した。 (3)DU-145/ARはDHT(dihydrotestosterone)を作用させたところ、有意に浸潤能が低下した。 2)DU-145/ARの培養上清中のIL-6を亢進させたVIPについて、IL-6プロモーターへの影響について検討を行った。ルシフェラーゼアッセイによるIL-6プロモーター活性を調べたところ、10^<-6>Mの濃度のVIPはDU-145/ARの活性を亢進させた。 3)各種濃度のVIPを作用させたDU-145/ARの培養上清中のIL-1βとTNF-αをELISAにて測定したところ、VIPはそれらのサイトカイン産生には影響をほとんど与えなかった。
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