研究課題
脊髄損傷および中枢神経疾患によって排尿制御機能が失われる状態というのは、臨床的な病態としては、尿の排出障害もしくは頻尿・尿失禁をおこす蓄尿障害である。今年度の研究においては蓄尿障害についての解明に研究の重点をおいた。そのターゲットとして、われわれが注目したのは、平成15年度までの研究成果より、アドレナリン受容体とニューロキニン受容体である。これらの受容体と、最近、注目されているATPについての関連性の検討を行った。SD種雌ラットを使用して実験を行った。膀胱内のニューロキニン受容体を選択的に不活性するレジニフェラトキシンを前日に投与して、カプサイシン、酢酸、ATP膀胱内注入による膀胱内圧曲線上の変化を検討した。カプサイシンおよび酢酸は膀胱内のニューロキニン受容体を特異的に刺激し、膀胱過活動を誘発するが、レジニフェラトキシンを投与した動物においては、その膀胱過活動はみられなかった。しかし、ATPを投与したラットにおいては、膀胱の過活動は弱いながらも認めた。このことより、ATPを介する膀胱収縮にはニューロキニン受容体も一部、関与する可能性があることを突き止めた。この新しい機序の解明結果に基づいて、神経再生の可能性についての検討も行ったが、明確な結論を得るまでにはいたらず、今後の検討課題として残った。しかしながら、臨床応用の可能性についての検討も行っている。脊髄損傷の患者における頻尿・尿失禁は膀胱のニューロキニン受容体を介するものであることが示唆されている。そのため、ニューロキニン受容体を脱感作する薬剤であるカプサイシンおよびレジニフェラトキシンを実際に7名の脊髄損傷患者の膀胱内に注入し、一定の効果が得られることを解明した。また、膀胱に尿がたまると痛みを生じるために頻尿を生じる疾患である間質性膀胱炎についてもニューロキニン受容体の関与の可能性があることも突き止めた。
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