研究概要 |
1970年代に女性由来の癌(乳癌、子宮癌等)でBarr bodyの欠損すなわち不活化X染色体が消失するという現象がいくつか報告され、さらにこの事象は予後不良因子として認識されていた。女性癌におけるBarr bodyの欠失のメカニズムや生物学的意義付けはその後明らかにされることなく今日に至っているが、われわれはKlinefelter症候群に発生した癌細胞株において不活化Xの消失に引き続いて活性型Xの付加がおこっていることを示した(Oncogne in press)。さらに国内細胞バンクより入手可能であった卵巣癌、乳癌細胞株を中心とする女性由来の細胞株22株を入手し検討したところ13の細胞株で不活化Xの消失が観察された。これらについてそのメカニズムの解析を進めたところ、11の細胞株ではKlinefelter症候群に発生した癌細胞株同様、活性型Xの付加がみられ、残り2細胞株では本来不活化Xであったものが再度活性化されていることが明らかとなった(Oncogne in press)。 これまでわれわれは精巣腫瘍においても癌感受性遺伝子座としてのX染色体に着目し、癌遺伝子の存在を想定してきた(LANCET2004,Genes, Chromosomes and Cancer2003, J Urol 2003)。 さらに最近明らかにされたBRCA1遺伝子変異と不活化X染色体の再活性化との興味深い関係(Cell2002)にも注目し、次年度は上記細胞株におけるBRCA1、BRCA2遺伝子変異についても検討していく予定である。
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