研究課題
基盤研究(C)
1970年代に女性由来の癌(乳癌、子宮癌等)でBarr bodyの欠損すなわち不活化X染色体が消失するという現象がいくつか報告され、さらにこの事象は予後不良因子として認知されていたが、その生物学的意義やメカニズムについては不明のまま今日に至っている。Klinefelter症候群は、男性500人に1人の割合で発生する性染色体異常である。Klinefelter症候群(47XXY)は性腺外胚細胞腫、乳癌の発生率が高く染色体異常の中でも発癌感受性の高い症候群といえるが、余剰X染色体がKlinefelter症候群の腫瘍感受性を高めている可能性も考えられる。今回の研究で、われわれはKlinefelter症候群由来癌細胞株(PSK-1)において不活化X染色体の欠失と活性型X染色体の増幅という興味深い事象を見出した。さらに、乳癌、卵巣癌、子宮癌由来の細胞株(乳癌由来株8例、卵巣癌由来株7例、子宮癌由来株7例の22細胞株)おいても同様な不活化X染色体の欠失が起こっている場合には、活性型X染色体の増幅が随伴していることを明らかにした。逆に活性型X染色体の欠失は、認められなかった。活性型X染色体の増加は主に染色体不分離に伴っておこっていると考えられたが、不活化X染色体の再活性化と考えられる細胞株も認められた。今回のわれわれの研究により、Klinefelter症候群および女性由来の癌細胞においてDosage compensationの異常として、不活化X染色体の欠失と活性型X染色体の増幅が随伴して見られ明らかにした。このことは女性の癌や、Klinefelter症候群由来の癌感受性遺伝子座としてのX染色体が癌抑制遺伝子よりは、むしろ癌遺伝子的役割を果たす可能性を示したもので、35年前に報告されたBarr bodyの欠損の生物学的意義を一歩解明したといえる。
すべて 2005 2004 2003
すべて 雑誌論文 (6件)
Genes, Chromosomes and Cancer 23
ページ: 104-112
Chromosomes and Cancer 43
ONCOGENE 23
ページ: 6163-6169
ページ: 6163
J.Urol 169
ページ: 1546-1552
J Urol 169