研究概要 |
再燃性前立腺癌の臨床病態に類似したin vivoのモデル及び臨床検体を用いて、NF-κBの活性化経路に関わる因子を検討した。また、グルココルチコイドレセプター(GR)を介したNF-κBの抑制経路についても検討した。 1.去勢ヌードマウスを用いた検討 LNCaP細胞単独及びMC3T3-E1細胞との共培養した細胞の皮下移植モデルを作成した。現在、増殖能を観察中である。NF-κBの標的遺伝子であるIL-6,VEGF、IL-8のmRNA,蛋白レベルの発現を検討中である。 アンドロゲン非依存性であるPC3細胞の皮下移植モデルを用いて、免疫組織染色によりNF-κBのを発現を検討した結果、NF-κBは主に細胞質において発現を認めた。 2.臨床検体を用いた検討 ホルモン療法中に再燃をきたした症例の血清IL-6は、ホルモン療法前の症例あるいはホルモン療法が奏効しているの症例の血清IL-6に比べ、有意に高値であった。また、再燃後の治療が奏効した症例は、血清IL-6が下降した。このことより、血清IL-6は再燃性前立腺癌に対する治療の指標になり得ることが示唆された。血清VEGF,IL-8についても同様に検討中である。 3.グルココルチコイドレセプター(GR)の発現誘導または分解阻止の検討 GRを発現し、アンドロゲン非依存性であるDU145細胞を合成プログラスタンディンMisoprostol及びproteasome阻害剤MG132で処理後、GRの蛋白レベルでの発現をコントロール細胞と比較検討した。Misoprostol処理では、GRの明らかな発現変化は認めなかった。一方、MG132処理では、コントロールに比し、GRの発現が上昇していた。さらに、デキサメサゾンのDU145細胞に対する増殖抑制作用がMG132によって増強されるか否かを検討した。現在までの細胞培養系では、明らかな増強効果は認めていない。
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