研究概要 |
癌の浸潤・転移においてマトリックスメタロプロテアーゼ(matrix metalloproteinase:MMP)(MMP-9、-2)および内因性MMP阻害因子(tissue inhibitor of metalloproteinase:TIMP)(TIMP-1、2)の発現バランスは中心的役割を果たしている。本研究の目的は、(1)転移関連遺伝子群(MMP-9、-2、TIMP-1、-2、E-カドヘリン)のプロモーター領域でのDNAメチル化を検討し、各遺伝子間での転写調節シグナル伝達における相互作用を解明する事。 (2)癌の浸潤・転移の各段階(病期)における各遺伝子の転写調節の経時的変化を検討し、MMPの転写活性が最も高い病期およびTIMP、E-カドヘリンの転写活性が最も低い病期、つまり最もMMP阻害感受性を示す病期を解明する事。 (3)上記の遺伝子群以外の遺伝子のDNAメチル化のスクリーニングもMethylated CpG Island amplification法(MCA法)にて行い、未知の転移関連遺伝子を同定し、同様にその最も感受性を示す病期を解明する事。 (4)以上の結果に基づいて、最も感受性を有する病期において転移関連遺伝子群のDNAメチル化を系統的に制御する、より効果的な抗癌治療を新規確立する事。 この4点を本研究の目的とした。 現在までの研究経過としては、ヒト膀胱移行上皮癌細胞株(253J-P(低転移性,Grade3)および253J B-V(高転移性,Grade3)、UMUC-14(低転移性,Grade3)およびUMUC-13(高転移性,Grade3)、NS-B1(低転移性,Grade3)およぴNS-LN1(高転移性,Grade3))を用いて、転移関連遺伝子(E-カドヘリン)のプロモーター領域でのDNAメチル化をMethylation specific PCR法(MSP法)で同定した。 今後引き続き、転移関連遺伝子(MMP-9、-2、TIMP-1、-2)に関しても同様にDNAメチル化の同定を行う予定である。 またCombined bisulfite restriction analysis法(COBRA法)にてメチル化を定量的に解析し、各遺伝子間での転写調節シグナル伝達における相互作用の解明、さらには、Methylated CpG Island amplification法(MCA法)も行い、メチル化を認める未知の遺伝子の同定も行う。
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