癌の浸潤・転移においてマトリックスメタロプロテアーゼ(matrix metalloproteinase;MMP)(MMP-9、-2)および内因性MMP阻害因子(tissue inhibitor of metalloproteinase;TIMP)(TIMP-1、-2)の発現バランスは中心的役割を果たしている。本研究の目的は、 (1)転移関連遺伝子群(MMP-9、-2、TIMP-1、-2、E-カドヘリン)のプロモーター領域でのDNAメチル化を検討し、各遺伝子間での転写調節シグナル伝達における相互作用を解明する事。 (2)癌の浸潤・転移の各段階(病期)における各遺伝子の転写調節の経時的変化を検討し、最もMMP阻害感受性を示す病期を解明する事。 (3)上記の未知の転移関連遺伝子のDNAメチル化のスクリーニングもMethylated CpG Island amplification法にて同定し、同様にその最も感受性を示す病期を解明する事。 (4)以上の結果に基づいて、最も感受性を有する病期において転移関連遺伝子群のDNAメチル化を系統的に制御する、より効果的な抗癌治療を新規確立する事。 この4点を本研究の目的とした。 現在までの研究経過としては、転移能や細胞異型度の異なるヒト膀胱移行上皮癌細胞株8株を用いて、転移関連遺伝子のプロモーター領域でのDNAメチル化をMethylation specific PCR法(MSP法)で同定した。 現在、これら遺伝子のRNA発現レベルをRTPCR法を用いて同定し、発現抑制を認めた遺伝子に関してメチル化抑制剤(5-AZA)を用いて、DNAメチル化を確認中である。また、特異的発現を認めた遺伝子に関してDirect sequence法を用いて塩基配列を同定し、DNAメチル化を確認中である。また、今後引き続き、臨床生検材料を用いてDNAメチル化の同定も行う。
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