研究概要 |
癌細胞株(T24,EJ4,HT-1197,RT4,253J-P,253J-BV,UM-UC-14)と正常細胞株、RPTEC(近位尿細管上皮細胞)とHUVEC(ヒト膀帯静脈内皮細胞)合計9株を用いて、転移関連遺伝子のプロモーター領域でのDNAメチル化をMethylation specific PCR法(MSP法)でE-cadherinを、Combined bisulfite restriction analysis(COBRA)法でMMP2、MMP9、TIMPI、TIMP2を同定した。また、臨床生検材料44検体(膀胱移行上皮癌組織22検体、正常膀胱粘膜組織22検体)を用いても同様にDNAメチル化の同定を行った。癌細胞株においてメチル化を認め、RT-PCR法でRNA発現抑制を認めたE-cadherin(T24,EJ-1)とTIMP2(HT-1197,KMBC-2)についてメチル化阻害剤5-アザデオキシシチジン(5-aza-deoxycytidine(5-aza))処理とヒストン脱アセチル化阻害剤(trichostatin A(TSA))処理による遺伝子再発現の誘導を行い、遺伝子発現とDNAメチル化の関与を確認した。 結果、E-cadherinに関しては癌細胞株T24,およびEJ-1において、またTIMP2に関しては、HT-1197,およびKMBC-2においてメチル化を認め、RT-PCR法でRNA発現抑制を認めた。その他に関しては、癌細胞株ばかりではなく、正常膀胱粘膜組織、膀胱移行上皮癌組織においてpartial methylatedおよびunmethylatedが混在していた。正常膀胱粘膜組織および膀胱移行上皮癌組織のメチル化に差は認めなかった。T24はcontro1としての処理前、TSA処理でも発現がなく、5-aza処理をした場合のみ発現を認め、メチル化がE-cadherinの発現に関与していると考えた。EJ-1に関してはcontrolとしての処理前で発現が弱く、5-aza処理、TSA処理で発現を認め、メチル化がE-cadherinの発現に関与していると考えた。また、HT1197、KMBC-2ともに処理前後ともに発現に差を認めないため、TIMP2の発現にメチル化は関与していないと考えた。 本研究にて、E-カドヘリンの発現抑制に関してはプロモーター領域でのDNAメチル化が関与している可能性が示唆された。しかし、他の転移関連遺伝子群(MMP-9,-2,TIMP-1,-2)に関しては、遺伝子発現に差を認めず、さらにはプロモーター領域でのDNAメチル化も認めなかった。結果、現時点ではこれら遺伝子に関するDNAメチル化の意義は不明である。
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